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天国へのメール [ひと]

081006_0029~0001.jpg4日の晩、僕の大切な恩人が亡くなりました。父親であり、兄弟であり、仕事仲間であり、飲み友達であり、人生の良き先輩でもあった方でした。晩年はうつ病とアルコール依存を患っており、家族や生活改善のワークグループ関係等特定の人間しか面会できない状態でしたが最近は少しずつよくなって来ている、という話を聞いていた矢先の出来事でした。

最後に会ったのは1年ちょっと前。初舞台のお知らせをしに行った際に少しだけお話をすることができました。あの頃の彼(年上の方に失礼な書き方かもしれませんがあえて彼、とさせて頂きます)は元気そうで、僕が彼の会社で働いていたときと何も変わらぬ様子で「よかったよかった」と言って微笑んで僕の話を聞いてくれていたのを、つい最近のことのように思い出します。インターネットメディアのニュース関連の仕事をしているとき、テレビで自殺者のニュースが流れるたび、「どんなに苦しくても自殺だけはいかんよなぁ。いかん」と口酸く言っていた彼がなぜそういう選択をしたのかはわかりません。ただ今は彼が苦しかっただろう、寂しかっただろうことを思うと、胸を掻き毟られるような気持ちです。せめてひと思いに逝けたなら、それだけでも救われるのですが、奥様も口をつぐんでしまわれているので、詳しいところまではわかりません。僕が感じられたのは、広言を憚られる様な今際だったのだろうということだけです。

ご冥福をお祈りします、と言いたいんですが今はまだ言えずにいます。なぜかと言えば、冥福を祈ってしまったら、彼にはもう会えないような気がしてならないからです。きっと寂しがり屋の彼も同じ気持ちなんじゃないかと思います。苦しくて苦しくて、早く天国へ行きたいんだけど、行ったらご家族のみなさんや僕たちにもう会えないかもしれないって思って、彷徨ってるんじゃないかなあと思うのです。だから、一週間だけ時間が欲しい。一週間の間、現世を彷徨って彷徨って、いろんな人の所に会いに来てもらって、それからお別れしたって遅くはないと思うのです。僕も一週間のあいだ存分に落ち込んで寂しがってから、ご冥福をお祈りして送り出してあげて、それから少しずつ、前へ前へ進もうと思います。

告別式が終わった後、彼に1通のメールを出しました。何になるわけでもありませんが、一部個人名等は改変して公開します。


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○○さん

チリです。
mixiにも書いたのですがまだまだ言い足りないことがたくさんあるのでメールしました。
メールなら絶対読むはずですしね。

一昨日からお疲れ様でした。たくさんの人が詰め掛けて、にぎやかな葬儀でしたね。
行き際に俺の車がいきなりエンジントラブル起こしたり、満足に眠らせてもらえなかったり、なんか帰り際、深谷~川島の間ぐらいに見たこともないものっそい濃い霧が発生してたりしました。全部あなたの仕業でしょう?いい年こいて(いい年…は余計だったか(^^;)いたずら好きにもほどがあります。

そちらに無線LANは通じてますか?きっと今も仕事しながら楽しいこと探してるんじゃないですか?
ご冥福をお祈りします、と言いたいんですけど今はまだ言えずにいます。
なぜかと言えば、冥福を祈っちゃったら○○さんにもう会えないような気がしてならないんですよ。
○○さんも同じですよね?苦しくて苦しくて早く天国へ行きたいんだけど、行ったらご家族のみなさんや僕たちにもう会えないかもしれないって、さ迷ってますよね?一週間だけ迷ってください。僕も一週間存分に落ち込んで寂しがってから、ご冥福をお祈りして、それから少しずつ前へ進もうと思います。あなたは絶対に天国にいけるはずなのであとのことは全然心配していません。だってこれだけ多くの人に好かれて愛されて慕われて、天国に行くことを望まれているのですから行けないわけがない。

僕が22ぐらいの時、仕事もせずにグータラしていた僕を見かねてS君が在宅スタッフに紹介してくれたのが最初でしたね。S君も相当な変わりもんで好き嫌いが激しいやつですけど悪い人間じゃないんですよね。G社に就職する際は、会社とは思えない雰囲気のオフィスと、社長とは思えないざっくばらんな○○さんに不思議な感じを受けましたけど、すごく好印象だったことを覚えています。

「明日は今日よりきっと良くなるはずだ」○○さんはそう信じて、事あるごとに口癖のように言っていましたね。そう信じて行動することが○○さんの信条だったんですよね。僕はそんな○○さんをちょっと狂信的かな、と感じましたが間違ったことは言ってないなあと思っていました。

いまさら何を言っても遅いのかもしれません。一度ちゃんとお礼がしたかったのに、いきなり往ってしまうなんてひどいですよ。僕たちがどれだけ○○さんに会いたかったことか。S君と会うとき、H君と会うとき、真っ先に○○さんのことを聞いていましたよ。最後にお会いしたのは1年ちょっと前かな。6月ぐらいに公演に出るっていうお話をしに行って、なんか僕、会社のこととか仕事のこととか、話のついでとばかりに、今にして思うとけっこうひどいことを言ってしまったのかなって少し後悔しています。あんな話をしなければあの後も会える機会があったのかもしれないって。考えすぎかもしれませんけどね。

少しだけ愚痴を言わせてください。どうしてですか?そりゃ○○さんの人生は○○さんのものですから、好きに生きていいと思います。でもあなたには沢山の仲間が居て、友達が居て、家族が居て。その人たちに何を伝えたかったんですか?もう僕たちはあなたの言葉を聞くことができないんですよ。どうしてあなたが死ななければならなかったんですか?それは死ななければならないほどのことだったんですか?あなたは子供は、家族は俺の命だって言ってましたよね。今もG社の人たちはあなたの大切なものを守るために、必死で策を練っていますよ。生きてても結局は同じことだったんじゃないですか?人に助けを求める弱さがあれば、あなたは死なずに済んだんじゃないんですか?ていうか最初は未遂でしょうよ。笑いの基本わかってないですよ。いきなりオチなんて誰も笑えないですよ。空気を読むのが超絶ヘタだったあなたらしいと言えばそうなのかも知れませんけど。

長くなりました。
向こうで寂しがってるかもしれませんけど、僕はまだそちらには行けません。1年前にもお話ししましたけど、僕は今群馬でアマチュア演劇をやっています。まわりで見てる人にはカネにもならないのにバカバカしいと思われるかもしれないけど全くそのとおり。バカみたいに真剣になれて、バカみたいに楽しいです。舞台に立っている時、体の芯から生きている喜びを感じます。「楽しいことをやろう」常日頃そう言っていたあなたならきっとわかってくれると思います。

僕のところに来るなら、一週間の間にしてくださいね。
約束ですよ。
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長文恐縮。

書いたひと:ちり
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